挿し木とは、増やす目的の植物の葉、茎、根など植物体の一部を採取し、差し床で不定根、不定芽を発生させ、独立した一個体に養成する繁殖方法です。
一般に挿し木は、種子の出来ない植物や、出来ても発芽の悪いもの、品種の固定されていないものの繁殖手段として用いられます。
挿し木には、赤玉土、鹿沼土、川砂、水苔、パーライト、バーミキュライトなどの用土が用いられます。これらの用土は、挿し木をする植物によって使い分けられますが、水はけが良く、清潔で肥料分がないことが条件です。用土に肥料分や腐食分が含まれていると、発根する前に切り口から腐ってしまう場合がありますので、用土は単用で使用します。
他の栄養繁殖と同様、遺伝的特性に変りなく、その特性が受け継がれる。
種子の出来ない植物や他の栄養繁殖では難しい植物、例えば、挿し木の困難なもの、発根しても後の生育が悪く、実用的でないもの。モモ、クリ、カキなど経済栽培する主要果樹のほとんどは、種子繁殖では品種の特性が失われる。また、挿し木も困難なものが多い。
台木を利用しての繁殖であるので十分な養水分の供給があることから、生育が旺盛でC/N率が高まり、開花、結実が促進される。
樹勢の調整ができる | 樹を矮化させたい場合など、台木の選択により樹勢を調整する。 |
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環境適応性の増進 | 風土に適した台木を用いて養成し、栽培を有利にする。 |
病害虫による被害の回避 | 免耐力のある台木を用いる。 |
結実率、果実の品質向上を図る | 台木の選択により、果実の結実量を増加させることができる。 |
増殖率をあげる | 台木さえ準備すれば、一度に多数の増殖が可能。 |
品種の更新ができる | 枝幹を切断して高接ぎ更新ができる。 |
樹勢の回復ができる | 樹齢が進み老化した樹木に強勢台木の根を接ぐことにより、樹勢を回復させ、経済年齢の延長を図る。 |
咲き分け、樹形の調整ができる | 盆栽接ぎ木と称して、樹齢の進んだ枝幹を利用して上部に枝接ぎ、基部に根接ぎをした速成に仕立てる技術。 |
接ぎ木活着は、まず台木の穂削傷面に形成されるカルス(癒傷組織)の癒合にはじまります。したがって、接ぎ木後、台穂削傷面にカルス形成が速やかに、しかも多量に形成される植物は活着容易ということになり、逆にカルス形成が遅く、量的にも少ない植物は活着困難ということになります。
枝接ぎ | 1〜数芽つけた枝を接ぎ穂とする接ぎ木方法。接ぎ穂、台木接着面の削り方や合わせ方によって、切り接ぎ・割り接ぎなどがある。 枝接ぎの作業方法についてはこちらをご覧下さい。 |
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緑枝接ぎ | 当年生の新梢を穂木として、同じく切り戻して出された新梢を台木として接ぎ木する方法。新梢どうしの接ぎ木であるので活着が良い。 |
芽接ぎ | 芽と少量の木質部をつけた樹皮を削りとり、これを台木の削傷部あるいは樹皮を剥がし露出した木質部に接着して接ぐ方法。 芽接ぎの作業方法についてはこちらをご覧下さい。 |
根接ぎ | 根接ぎには、茎に接ぐ「より根」の部分に接ぐと活着の良いものや、適当な台木の得られないときに根に枝接ぎを行う方法。樹木の樹勢回復のために、強勢な樹種の根を樹幹の基部に接ぎ木する場合もある。 |
実生接ぎ | クリ、ツバキのような比較的大きな種子の発根したばかりの実生を台木に用いて枝接ぎする方法。 |
茎項接ぎ | 無菌の実生台木にして、ウィルス病濃度の薄い茎項を解剖顕微鏡下で取り出し、これを台木切断面の形成層上にのせて活着を図る方法。 |
呼び接ぎ | 他の接ぎ木方法のように穂木を母樹から切り離さないで、根のある穂台それぞれの茎の一部を削り、その削傷面を密着させ癒合を図る方法。 |
断面がまっすぐに切られているので、台木削傷面との密着度が高く活着しやすい。 | 切り口断面がえぐれていたり、でこぼこしていると活着しにくい。 |
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台木削傷面と穂木の削傷面が密着するので、カルスの形成が素早く行われ、活着率が高い。 | 台木削傷面と穂木の削傷面が平ではなく、空間ができてしまっているので、活着が困難である。 |
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穂木は充実した枝を選ぶ。接ぎ芽となる部分は、葉柄を残して葉を切り取り、芽接ぎナイフで芽を中心に2cmくらい楯形にそぎとる。その際、わずかに木質部にかかるようにそぎとります。 |
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台木は平らな部分を選び、T字形の形成層に達する傷を入れ、芽接ぎナイフの爪で接ぎ芽が入れられる程度に樹皮を傷つけないように剥がす。 |
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T字形に切り込んだ部分に、調整した接ぎ芽をしっかり挿入する。この作業におていは、接ぎ芽が木質部に密着することが大切であり、接ぎ木部分は接ぎ木テープなどで接ぎ芽が動かないようにして芽だけを出して結束する。 |
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