落葉樹の剪定は今が適期です。花木には、前年に伸びた枝に花を咲かせる種類と、今年の春から伸びた枝に花を咲かせる種類があり、それぞれに剪定の時期や方法が異なります。個々の性質を確認して花を楽しみましょう。
前年に伸びた枝に 花を咲かせる種類 |
ハナミズキ、サクラ類、コブシ、ツツジ類、フジ、ボケ、ウメ、ツバキ類、ボタン、モクレン、ライラック、ロウバイ、レンギョウ、シャクナゲ、オウバイなど |
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今年の春から伸びた枝に 花を咲かせる種類 |
サルスベリ、ハギ、ノウゼンカズラ、バラ、ザクロ、ウメモドキ、ニセアカシア、ブットレア、ギョリュウ、クチナシ、ピラカンサなど |
忌み枝とは、交差枝、逆行枝、胴吹き枝、立ち枝、下垂枝、地際から出てくるヒコバエなど、そのまま放置しておくと著しく樹形を乱す枝や、他の枝の生育を阻害する枝を言います。
庭木の剪定を行なう際、コンパクトにまとめるために伸びた枝先だけを切ってしまいがちですが、樹木には頂芽優勢という原理があり、頂部のみを剪定し続けていると先端にばかり枝が集中して中間以降の枝は弱ってきてしまい、全体的にバランスの悪い姿になってしまいます。剪定を行なう際は、頂部の枝は強く切るか、間引くなどして樹の内部にまで日光が降り注ぐようにし、ふところからも良い枝が芽吹くようにすることが大事です。
また、間引き剪定を行なうことにより、風の通りもよくなり、病害虫の防除にも良い効果があります。
剪定は新芽の発芽という現象をともなうもので、個々の樹木によって花芽や葉芽の出かたや出る位置、時期など様々です。
したがって、それぞれの剪定時期や方法が異なります。花芽が出来上がった後に切り詰め剪定を行ってしまうと、当然、翌年の花は見られなくなります。ですので、個々の性質を良く知った上で、極力花に影響が少なく、樹木にも負担がかからない時期を選んで作業を行います。
樹種 |
花芽分化期 |
花芽の位置 |
開花期 |
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サクラ |
6月下旬〜8月上旬 |
側芽 |
4月上旬〜中旬 |
ウメ |
7月上旬〜8月中旬 |
側芽 |
1月中旬〜3月中旬 |
アジサイ |
10月上旬〜下旬 |
頂芽 |
6月上旬〜7月中旬 |
カイドウ |
7月中旬 |
側芽 |
4月上旬〜下旬 |
クチナシ |
7月中旬〜9月上旬 |
頂芽 |
5月下旬〜7月上旬 |
コデマリ |
9月上旬〜10月下旬 |
側芽 |
4月下旬〜5月上旬 |
サザンカ |
6月中旬〜下旬 |
頂芽 |
11月上旬〜1月中旬 |
ザクロ |
4月中旬 |
頂芽、側芽 |
5月下旬〜6月中旬 |
サツキ |
6月下旬〜8月上旬 |
頂芽 |
4月下旬〜6月中旬 |
サルスベリ |
4月下旬 |
頂芽 |
8月上旬〜9月下旬 |
サンシュウ |
6月上旬 |
側芽 |
2月下旬〜4月上旬 |
シャクナゲ |
7月上旬〜中旬 |
頂芽 |
5月上旬〜6月中旬 |
ジンチョウゲ |
7月上旬 |
頂芽 |
3月中旬〜4月中旬 |
ツツジ |
6月中旬〜8月中旬 |
頂芽 |
4月上旬〜6月中旬 |
ツバキ |
6月上旬〜7月上旬 |
頂芽 |
11月中旬〜4月下旬 |
ドウダンツツジ |
8月上旬〜中旬 |
頂芽、側芽 |
3月中旬〜4月下旬 |
ニワウメ |
8月中旬 |
側芽 |
3月下旬〜4月下旬 |
ハクチョウゲ |
3月下旬〜4月上旬 |
頂芽 |
5月上旬〜7月上旬 |
ハクモクレン |
5月上旬〜中旬 |
頂芽 |
3月中旬〜4月上旬 |
ハナズオウ |
7月上旬 |
側芽 |
4月上旬〜5月下旬 |
フジ |
6月中旬〜下旬 |
頂部の側芽 |
4月上旬〜5月下旬 |
ボケ |
8月下旬〜9月上旬 |
側芽 |
3月下旬〜4月下旬 |
ボタン |
7月下旬〜8月下旬 |
頂芽 |
4月下旬〜5月下旬 |
ハナミズキ |
6月中旬 |
側芽 |
4月中旬〜5月中旬 |
ムクゲ |
5月下旬 |
側芽 |
7月上旬〜9月中旬 |
キンモクセイ |
5月中旬〜6月中旬 |
側芽 |
9月下旬〜10月下旬 |
モモ |
8月上旬〜中旬 |
側芽 |
3月下旬〜4月中旬 |
ユキヤナギ |
9月上旬〜10月上旬 |
側芽 |
3月下旬〜4月中旬 |
ライラック |
7月中旬〜8月上旬 |
頂部の側芽 |
4月中旬〜5月中旬 |
冬の間の薬剤散布は、越冬している病気や害虫を駆除するために行います。
病気 |
ウドンコ病(芽の付近で菌糸)、赤星病(ビャクシン類に胞子)、縮葉病(芽の中で菌糸)、炭そ病(枝や芽でカビ)、黒星病(枝で菌糸) |
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害虫 |
アブラムシ(卵など)、カイガラムシ(成虫)、ミノムシ(成虫)、イラガ(卵)、シャクトリムシ(成虫)、ハダニ(成虫、卵)、オビカレハ(卵)、ドクガ(卵)、コガネムシ(幼虫)、マツケムシ(幼虫)、アメリカシロヒトリ(サナギ) |
冬期消毒(1月下旬〜3月上旬)に使用する薬剤は、マシン油乳剤と石灰硫黄合剤の2つがあります。
マシン油乳剤は、カイガラムシやアブラムシの卵、ハダニなどの害虫の駆除に用いられます。落葉樹に使用する場合は、20〜30倍、常緑樹に使用する場合は30〜50倍に薄めたものを使用します。石灰硫黄合剤は、殺虫、殺菌の両方に効果があり、10〜20倍に薄めたものを使用します。それほど大きくない樹木でしたら、噴霧器で散布するよりもハケで直接塗るほうが散布液が飛散しないので、手間がかかりません。
いずれの薬剤も、冬期散布の場合、気温が10℃以下で安定している時期に行いますので、1〜3月上旬には済ませておきましょう。
アジサイの仲間は、新しい枝の頂部に花芽をつける習性があります。その芽が翌年に伸びて、その先に開花します。したがって、花後の剪定を行わずに放任していた場合、年々花の位置が高くなりますので、コンパクトな樹形を楽しみたいのであれば、花後の剪定を行なう必要があります。
花芽から新梢が伸び、その頂部に開花する。あまり大きしたくない場合は、花後にAの位置まで切り詰める。 |
花後の剪定をやらなかった場合、花の下にある芽が花芽となる。 |
新たに伸びた枝先に開花するので、花の位置が高くなる。 |
ツバキやサザンカの仲間は、花後に伸びてきた新梢の頂部に翌年の花芽をつける性質があります。花後に放任していても、その後に伸びた枝に花芽をつけるので、翌年も花を楽しむことができますが、剪定をしないと先端の葉芽がどんどん伸びてきて、樹冠が年々大きくなってしまいます。 あまり大きくしたくない場合は、花後、枝ごとに葉を3枚くらい残す程度に切り戻しを行います。その後、切った後から2〜3本の新枝が伸びてきて、翌年の花芽を作ります。 基本的な剪定は、葉のつけ根で切る「切り詰め剪定」ですが、玉仕立てや生垣仕立ての場合、芽吹きがよい刈り込み剪定でも可能です。 |
ボタンの花を毎年咲かせるには、剪定は欠かすことのできない作業です。ボタンの場合、剪定と同時に「芽欠き」という作業が大切になってきます。 ボタンは、剪定をしなかった場合、花の下にある葉腋に翌年の花芽を持ちます。そのまま咲かせてもいいのですが、頂部に花を咲かせるために、毎年花の位置が上がってきてバランスが悪くなってしまいます。 ボタンを低い位置で咲かせるには、花後すぐに花首だけ切り落とし、6月頃に葉腋の芽が膨らんできたら、枝先の芽を2芽、ピンセットなどで掻きとります。そうすることによって、下部に残った芽が花芽となり、低い位置で開花させることができます。 |
冬の間に強く切り詰めた場合、春から勢いのよい新梢が3〜4本伸びだして、夏に開花する。枝数が少ないため、大きく見ごたえのある花を楽しめる。 |
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冬期剪定を行わなかった場合 |
冬の間に、前年度開花した枝を切らなかった場合、それらの枝からさらに小枝が発生し、花数も少なく、小さな花が咲く。 枝が密生していることにより、日当たり及び風通しが悪くなり、病害虫の発生の原因となるので、冬季剪定は欠かすことのできない作業です。 |
ウメの花芽は、だいたい秋口には形成されていますので、冬期剪定は花芽を確認しながら不要な枝を整理していくことになります。花芽は、勢い良く伸びた徒長枝にはつかず、10数cmで伸び止まった充実した短枝につくので、枝先を軽くはさむくらいであれば、花芽を失うこともありません。また、明らかに不要な枝や他の枝と重なりあうように伸びた枝は、つけ根から切り落とします。 懐から伸びた徒長枝は、そのままにしておくと著しく樹形を乱す要因となりますので、これらの枝も整理しますが、徒長枝であっても5〜6芽残すようにして先端を切り詰めると、結果的に残りの芽が短枝となり、その枝に花芽を持たすことができます。 |
三つ葉透かし 樹形をコンパクトにする剪定方法で、主枝から伸び出た枝を、葉を3枚残した状態で葉のつけ根の上で切り戻します。切り詰められた枝からは、新梢が2本出てくるので、樹冠を詰め、なおかつ枝数をみつにしたい場合に行います。 カシ類だけでなく、ツバキ類、モチノキなど他の種類の常緑樹にも同様の剪定を行なうことができます。 |